「所得控除って何?」
「ただの『控除』と何が違うの?」
という疑問を持っている方もいると思います。
所得控除をちゃんと理解し、上手に活用すれば、今の税金を安くできるかもしれません。
今回は、所得控除についてわかりやすく解説します。
控除の意味があいまいな方は、下の記事も参考にしてください。

所得控除とは?
所得控除とはわかりやすく言うと、所得から差し引くものです。

所得金額が小さくなることで、税金を安くする効果があります。
所得控除は「所得税」の計算に使われる
所得税は、所得すべてにかかるわけではありません。
所得控除した後に残った「課税所得」に対してかかります。
具体的には、次の4ステップで求めます。
15種類ある所得控除の中から、自分が受けられる所得控除を探す
それぞれの所得控除額を計算し、合計する
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 = 所得税
所得控除が大きくなるほど節税になる
ポイントは、所得控除が大きくなるほど税金が安くなるという点です。
なぜなら、課税所得が小さくなるからです。
つまり、所得控除を理解して上手に使うことが、節税への近道となります。
所得控除は15種類
所得控除は、納税する人の事情に合わせて15種類が用意されています。
なお、全部覚える必要はありません。
ご自身に関係がありそうなものだけチェックしておけば十分です。
種類 | どんなとき(どんな人)? | 控除額 |
---|---|---|
基礎控除 | 全員(※所得制限あり) | 最大95万円 |
配偶者控除 | 年収103万円以下の配偶者がいる | 最大38万円 ※70歳以上は最大48万円 |
配偶者特別控除 | 所得が一定額を超える配偶者がいる | 最大38万円 |
扶養控除 | 16歳以上の扶養親族がいる | 38~63万円 |
障害者控除 | 本人や配偶者、扶養親族が障害者である | 27~75万円 |
寡婦控除 | 夫と死別または離婚した | 27万円 |
ひとり親控除 | ひとり親である | 35万円 |
勤労学生控除 | 働きながら学生をしている | 27万円 |
社会保険料控除 | 社会保険料を払っている | 支払った全額 |
生命保険料控除 | 生命保険料を支払った | 最大12万円 |
地震保険料控除 | 地震保険料を支払った | 最大5万円 |
小規模企業共済等掛金控除 | iDeCoなどの掛け金を支払った | 支払った全額 |
医療費控除 | 一定額以上の医療費がかかった | 最大200万円 |
雑損控除 | 災害や盗難にあった | ※条件が複雑なので割愛 (詳しくは国税庁「雑損控除」) |
寄付金控除 | ふるさと納税等で寄付をした | ※条件が複雑なので割愛 (詳しくは国税庁「寄付金控除」) |
所得控除の計算例
ではサラリーマンを例に、所得税を計算してみましょう。
- 年間の所得は300万円
- 配偶者あり(30歳・パート年収80万円)
- 社会保険料を払っている(年46万円)
今回は計算がややこしくならないよう、条件はシンプルにしています。
【STEP1】使える所得控除はどれ?
最初に、使える所得控除はどれかを確認します。
15種類ある所得控除の中から、自分が受けられる所得控除を探す
それぞれの所得控除額を計算し、合計する
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 = 所得税
今回のケースだと、使える所得控除は「3つ」です。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 社会保険料控除
基礎控除は、全員が受けることができるものでしたね(※所得制限あり、後述)。
あと年収103万円以下の配偶者がいるので「配偶者控除」が使えそうです。
さらに社会保険料を払っているので「社会保険料控除」が使えます。
【STEP2】所得控除はいくら?
次に、それぞれの所得控除額をチェックします。
15種類ある所得控除の中から、自分が受けられる所得控除を探す
それぞれの所得控除額を計算し、合計する
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 = 所得税
基礎控除
基礎控除額は、所得によって変わります。
表によると、今回のモデルは「所得300万円」ですから、48万円が控除されます。
納税者の所得 | 控除額 |
---|---|
2400万円以下 | 48万円 |
2400万円超 2450万円以下 | 32万円 |
2450万円超 2500万円以下 | 16万円 |
2500万円超 | 0円 |
配偶者控除
配偶者控除も、納税者の所得によって金額が異なります。
今回のケースは所得300万円ですので、38万円が控除されます。
納税者の所得 | 控除額(配偶者が70歳未満の場合) |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超 950万円以下 | 26万円 |
950万円超 1000万円以下 | 13万円 |
なお納税者本人の所得が1000万円を超えると、扶養控除は受けられません。
社会保険料控除
支払った社会保険料は、全額、社会保険料控除を受けられます。
ですので、全額46万円が所得から控除されます。
所得控除の合計額は?
所得控除をすべて足すと132万円になりました。
基礎控除 | 48万円 |
配偶者控除 | 38万円 |
社会保険料控除 | 46万円 |
所得控除の合計 | 132万円 |
【STEP3】課税所得を計算しよう
15種類ある所得控除の中から、自分が受けられる所得控除を探す
それぞれの所得控除額を計算し、合計する
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 = 所得税
課税所得は、所得から所得控除を引くことで求められます。
所得が300万円で、所得控除が132万円ですから、課税所得は168万円になります。
【STEP4】所得税を計算しよう
15種類ある所得控除の中から、自分が受けられる所得控除を探す
それぞれの所得控除額を計算し、合計する
所得 - 所得控除 = 課税所得
課税所得 × 税率 = 所得税
所得税は、以下の税率で求められます。
課税所得金額 | 税率 |
---|---|
195万円以下 | 5% |
195万円超 330万円以下 | 10% |
330万円超 695万円以下 | 20% |
695万円超 900万円以下 | 23% |
900万円超 1800万円以下 | 33% |
1800万円超 4000万円以下 | 40% |
4000万円超 | 45% |
課税所得は168万円ですので、税率は5%です。
計算すると、所得税は84,000円となります。
所得控除を上手に使うと節税できる
ポイントは、所得控除を上手に使うほど税金を安くできるという点です。
所得控除の額が増えるほど、課税所得が減るからです。
「iDeCoは節税にもなってお得」と聞いたことがありませんか?
これは、15ある所得控除のうち「小規模企業共済等掛金控除」が使えるからです。
たとえばiDeCoで年間24万円積み立てたとすると、24万円まるまる所得から差し引くことができます。
つまり、24万円分の所得を「なかったこと」にできるわけです。
もし税率が10%なら、節税額は24万円 × 10% = 24,000円です。
めちゃくちゃお得ですよね?
所得控除をうまく使えば、手取りを増やすことができます。
まとめ
所得控除について、内容をまとめます。
- 所得控除とは「所得から差し引くもの」
- 所得控除は所得税の計算に使われる
- 所得控除は15種類ある
- 所得控除を漏れなく使うことで節税できる